人間力を定義することで目指すもの
本町が「自然環境」「健康と人間らしい暮らし」「歴史文化」を活かした持続可能な地域社会の形成を目指すにあたって、未来を支える人づくりの指針となる『人間力』を定義しました。
この『人間力』は、社会が大きく変化していく中で、「自ら価値を創りだし、地域社会が今後も持続発展していくための力」であると同時に、「これからの社会において、一人ひとりが自己実現と社会貢献を果たしながら充実した人生を生きていくために必要な力」といえるものであります。今後はこの『人間力』を本町の地域・家庭・学校が連携して目指す人づくりの共通の指針として、より一層の連携と協働を進めていきたいと思います。
人間力の構成
海士町では『人間力』を、「持続可能な地域社会を創る力」として定義しました。従来の教育の基本である「知(智)」「徳(情)」「体(健)」に加え、今後さらに重要性を増していく「コミュニケーション能力(結)」と、「意志の力(志)」、そして持続可能な地域社会の形成には欠かすことができない「地域や自然と共に生きる力(地)」の6つ(「智」「志」「健」「地」「情」「結」)の要素とそれを構成する16の力から成り立つ総合的な力として定義しました。なおこれらの要素を表す一言の漢字には、それぞれ本町ならではの馴染みがある字を選びました。
持続可能な地域社会を創る力「人間力」
「智」とは
知識を元に思考し、課題を解決していく力。常に学びながら、新たな価値を創造していく力。「知」という字には、座学や机上の知識というイメージがあるのに対し、ここでは学問上の知識だけでなく、体験や内省からの学ぶ力や伝統や実社会に根ざした智恵という意味も含めているため、「智」という字をあてた。
「志」とは
士(さむらい)の心と書いて「志」。自ら動きコトを為していく意志の力。「やってみたい」という主体的な「チャレンジ精神」と、その想いを自ら実行にうつす自立的な「行動力」、そして困難にぶつかってもあきらめずに乗り越えていく「忍耐力」を土台にしている。
「健」とは
心身の健康のこと。食事、休息、運動などの生活習慣に支えられている「体の健康」と、ストレスや感情をうまく調整することで保たれる「心の健康」からなる。
「地」とは
地域と地球(自然)と共に生きる力、「地力(じりょく)」。地下(じげ)の歴史文化、知恵を引き継ぎ、発展させ、次につなげていく「文化の継承力」と、自然環境を守り、自然からの恩恵を活かしながら生きていく「自然との共生力」からなる。
「情」とは
清き心と書いて「情」。自分と縁あるものを大事にしていこうとする「思いやりの心」、社会の構成員としての責任と自覚を持ち、公に対して貢献しようとする「奉仕の心」、つながりの中で生かされていることへの「感謝の心」からなる豊かな心。
「結」とは
自己と他者、人と人とを結ぶコミュニケーションの力、「結(ゆい)の力」。相手の想いや発想を引き出し、自分と異なる意見や考えも、まずは受け容れ共感的に理解しようとする「受容力」。また自分の想いや考えを効果的に相手へ伝える「表現力」。そして異なる意見も調整しながら人と人をつなぎ、ネットワークやチームワーク、協力関係を創りだしていく「連携力」。
6つの構成要素と16の力の並び方と相互関係
円の下二つの力(健・地)は主に身体に関わるもの、中の二つ(志・情)は主に心に関わるもの、上の二つ(智・結)は主に頭に関わるものとなっています。
また円の左側の三つの力(健・志・智)は主に自分自身に関わり、強い自己の確立と自立に必要な要素。円の右側の三つの力(地・情・結)は主に他者や地域、社会、自然と関わりの中で自己を活かす共生の要素となっています。
16の力の並び方は、関係が近く相互関連性が深い力が隣り合うような配置となっています。(例 「受容力」と「思いやりの力」)
補足
多様性を重視する海士町としては、全員が同じようにすべての力を持つことを目指すのではなく、町全体として見たときにバランスがとれていることが大事です。個々の力の強弱や凸凹は「個性」や「人間的な魅力」の現れとして前向きに受け容れ、足りないところは他者との相互扶助により補い合い、強みをお互い活かしあって相乗効果が出る関係性ができていることを目指すものとします。そのため教育や育成に際しては「弱い部分を鍛える」という発想に加え、「強みをさらに伸ばす」「強みをさらに活かす」という視点も大事にしていきます。
また、この人間力は総合的な力であるため、子どもにおいては「学校」だけではなく、「学校」と「家庭」と「地域」の連携の中で伸ばしていくものであり、成人においては「仕事」や「家庭」や「地域」の活動を通して高めていけるものです。
なお、今回示した「人間力」の定義は未完であり、常に社会や現状の変化にあわせながら改善していきます。
生きる力と人間力の関係性は、中教審教育課程部会(平成18年2月)によると、「実社会とのかかわりの中で『生きる力』をより具体化し、発展させたものが『人間力』である。社会の側からの視点である『人間力』を用いて学校教育を見ることによって、足らざるを補い、より充実したものに改善することを目指す。」と述べられています。